2016年1月29日、日本銀行は金融政策決定会合(金融政策の運営を話し合いで決める会合)でマイナス金利政策の導入を決めました。そして、2月16日から実際に-0.1%のマイナス金利の運用が開始しています。
マイナス金利の導入は日本では初めてのことです。したがって、「どのようなものなのかわからない」という人も多いはずです。
また、株式投資に興味のある人や経験の少ない初心者の方は、マイナス金利が導入されたことで、「株式市場への影響はどのようなことが起こるのだろうか?」と、考える人もいるのではないでしょうか。
このページでは、マイナス金利で何が起こるのか。特に株式市場にはどのような影響があるのかについて解説します。
マイナス金利の仕組みを理解する
はじめに、「そもそもマイナス金利って何だろう?」と、思った人も多いはずです。通常であれば、預金には利息がつきます。つまり、銀行に預けているだけで預金が増えます。しかし、マイナス金利になると、通常受け取る利息分を、逆に銀行に支払わなければならないのです。
例えば、あなたが銀行に100万円を預けておいたとします。 その100万円から、毎年金利0.1%分である1,000円が引かれるということです。
しかし、日銀の導入したマイナス金利は少し意味合いが違います。
どういうことかと申しますと、私たちが預けたお金から金利分が引かれるわけではありません。
銀行が日本銀行の当座預金に預けているお金から金利分が引かれてしまうのです。
少し具体的にお話しします。日本銀行は今まで、毎月6兆円〜7兆円、年間にして80兆円規模の国債(国が発行する債券のことで満期までの間利息を受け取る)を銀行から買い入れています。そして国債を売った銀行は、その資金を日本銀行の当座預金に入金してきました。
マイナス金利が導入されるまで、銀行はその資金をそのまま日本銀行の当座預金に預けておくことで、毎年年利0.1%のお金が何もしないで手に入れることができたのです。
しかし、マイナス金利導入後は、毎月6兆円〜7兆円、年間にして80兆円の金額に対して0.1%の金利分を引かれてしまいます。
80兆円の0.1%は800億円です。つまり、銀行は日本銀行の当座預金に預けておくだけで、年間で800億円もの大金を損することになるのです。
マイナス金利が与える影響
さて、マイナス金利が導入されたことで、銀行がお金を日本銀行に預けていると損をしてしまうことがわかりました。それではその影響で、どのようなことが起こるかを考えてみましょう。
先述のとおり、銀行は日本銀行の当座預金に預けたままでは損をしてしまいます。そうなると、これまで預けていた年間80兆円を、日本銀行の当座預金から引き出して他へ回すことを考えます。
ここでいう他とは、主に個人や企業への融資。または株式などへの投資です。個人や企業側からすると、マイナス金利導入により金利が下がるため、借金を全額返済して、返済前より低い金利で借り直した方が得です。これを「借り換え」といいます。
例えば、1000万円を年に2.3%の金利で借りていた場合、1年目は23万円の利子を払っていたとします。しかし、借り換えにより金利が1.3%になれば、年に13万円の利子の支払いで済むようになります。
実際にわたしも借り換えを行いました。金額としては数百万円と少ない金額でしたが、借り換えにより月々の支払いも減り、金利分も減ったことで、年間で30〜40万円は浮きました。この浮いたお金は設備投資に回すことができたのです。
このように、マイナス金利の導入で企業への融資、または個人への融資にも影響が及ぶことになります。これにより企業の設備投資や、個人の消費活動が活性化していきます。
設備投資の他には、利子を払うことが前提である、車のローンや住宅ローンに影響があるでしょう。つまり、車市場や不動産市場の活性化につながるのです。
利回りが下がるとお金は株式投資に向かう
さて、日本銀行はマイナス金利の導入をして、国債の買い入れも継続しています。この国債の買い入れ継続により、国債価格は上昇し、利回りは下がります。なぜ、利回りが下がるのでしょうか。
例えば、100円の価格で金利2%の国債があるとします。金利は2%のため、年間で2円の利息を受け取ることができます。このときの利回りは100円に対して2円なので、2%です。
この国債をどんどん買い入れて、価格が102円になりました。102円で買っても受け取る利息は2円です。このときの利回りは102円に対して2円なので、1.96%となります。つまり2%から1.96%に利回りが下がってしまうのです。
このように、日本銀行が国債の買い入れを継続しているので、国債の利回りは下がり続けています。
預金の金利も下がり、国債の利回りも下がると、資金の運用をしているところは運用成績が悪くなります。そうなると、行き場をなくした資金を株式投資に回してくるでしょう。そのとき、株式投資に興味を持ち始めた初心者には、良いチャンスとなります。
なぜなら、自分が投資した株の売買の結果が短期間で出るからです。
例えば、株式市場に資金が回ると株の売買が活発になります。そうなると、株の値がよく動くことになります。すると、投資した株が自分で設定した目標金額に達する可能性が高くなるのです。
目標金額に達した株は売ることで利益を確定します。これを「利益確定」といいます。逆に損をして売ることがあります。これは「損切り」といいます。利益確定や損切りをすることで、株式投資のひとつの売買の結果が出ることになります。
それとは逆に、株式市場に資金が流れてこないときは株の値がほとんど動きません。そうなると、なかなか利益確定や損切りのチャンスが巡ってきません。ひとつの売買の結果が出るまで、1年以上かかることもあります。
株式投資の初心者の方には、株式市場に慣れるためにまずは株の売買をひと通り体験していただきたいです。そのため、株式市場にお金の流れてくるときは株式投資初心者に良いチャンスとなります。
まとめ
最後にまとめます。マイナス金利の導入で、銀行が日本銀行に預けているお金を世の中に回すことになります。これにより、企業や個人はお金を借りやすくなるため、借り入れや借り換えが増えます。
そして、企業や個人が借りたお金は、設備投資に回したり、車や不動産の購入に回したりするようになるのです。また、借り換えで余裕が出来た分も消費に向かいます。
その結果、主に不動産の市場や設備投資で機械の分野などが活性化することになります。
今度はそれを見込んで、利回りが低くなった国債の運用資金が、国債から株式へ乗り換えます。そのため、お金は株式市場に流れこむことになるはずです。
つまり、マイナス金利の導入により、株式市場に大きなお金が流れこむことになります。 このことは、株式投資に興味ある方や、株式投資初心者の方には株式投資を始める良いチャンスとなります。先程述べたとおり、短期間のうちに株の売買をひと通り体験することができるからです。
株式投資を実践するには、お金の流れをつかむことが大事です。
この項にあるように、お金はどのように動いていくのか常に考えるようにしましょう。