株式投資をしている人で複数の証券口座を開設している人はたくさんいます。株式投資をこれから始めようとしている初心者の方は、どうして証券口座を複数持つ必要があるのか疑問に思うかもしれません。
このページでは、証券口座を複数持つ理由やメリットを解説します。
証券口座を複数持つと便利です。このページをご覧になり複数の証券口座を使い分ける参考にしてください。
証券口座を複数持つ4つの理由
冒頭で述べたとおり、証券口座は複数持つことで使い分けをしています。どのように使い分けているかと言うと、主に次の4つの使い分けになります。
2.株の取引に役立つツールで使い分ける
3.短期売買と長期保有で口座を分ける
4.IPO(新規公開株)の抽選に申し込むための口座
これらの4つを解説します。
1.売買手数料の違いによる使い分け(口座の乗り換え)
証券口座を複数持つ理由の1つ目は、株の売買手数料の違いになります。株の売買手数料は証券会社により異なるため、出来るだけ手数料の安い証券会社を利用した方がお得です。
そのため、最初は手数料が高めの証券会社を利用していた人が手数料が安めの証券会社に乗り換えることがあるわけです。つまり、使い分けというよりも乗り換えという方が合っています。
- 体験談
1999年初頭、私は初めての口座に『野村證券』を利用しました。その頃はまだネット証券は開業していませんでした。そのため、野村證券の株式の売買手数料は、すごく高かったのを覚えています。(数千〜数万円)
その後、1999年の中頃に『マネックス証券』が開業しました。ネット証券は手数料が安いため、すぐに口座を開設したわけです。
このように、手数料が安い証券会社に乗り換えることにより、証券会社の口座が増えていきました。
2018年現在の私が持っている証券会社の口座の手数料を比べますと、以下の通りになります。
私が開設した証券口座(口座開設した順番どおり)
取引金額 | 〜10万円 | 〜20万円 | 〜30万円 | 〜50万円 | 〜100万円 |
---|---|---|---|---|---|
野村證券 | 150円 | ➖ | 324円 | 515円 | 1,029円 |
マネックス証券 | 100円 | ➖ | 250円 | 450円 | 成行1,000円 指値1,500円 |
岩井コスモ証券 | 86円 | ➖ | 259円 | 432円 | 864円 |
GMOクリック証券 | 95円 | 105円 | ➖ | 260円 | 470円 |
※岩井コスモ証券は、月額で定額制(月に10,800円以上はかからない料金設定)もあります。
このように、手数料は証券会社によりバラバラです。ご覧のとおり、現在は昔のような手数料の差はありません。そのため、株の売買を毎日するなど、取引の数が相当多くない限りは、手数料を気にして証券口座を使い分ける必要はないでしょう。
2.株の取引に役立つツールで使い分ける
証券口座を複数持つ理由の2つ目は、投資に役立つツールによる使い分けです。投資に役立つツールはいろいろとあります。それは以下のようなものです。
・決算&業績予想ツール
・スクリーニングツール(銘柄を見つける)
・トレードツール(パソコンで株の売買)
・スマホアプリツール(スマホでも株の売買)
このように、投資に役立つツールはさまざまです。そして、これらのツールは証券会社により提供しているものが異なります。そのため、あなたが使いたい投資ツールを利用するには、証券口座の使い分けが必要になります。
上記のツールがどのようなものか説明します。
ファンダメンタルズ分析ツール
ファンダメンタルズ分析ツールは、会社の業績や財務から見た株価がどのような状況なのか、一目でわかるツールです。知りたい会社の株価が割安か割高かを調べるために便利です。
このように、気になる銘柄(写真はジャステックを表示)の株価が事業価値や財産価値から分析して、割安か割高かが一目でわかります。ジャステックは2018年5月の時点では、割安なようです。
こちらは、かなりの割高のようです。業績は好調ですが株価はすでに折り込み積みで、上がりすぎていることが一目でわかります。
この分析ツールは『クリック証券』で使えます。私は実際に、割高なのか割安なのかをとりあえず判断するのに使っています。もちろん、これだけを見て判断するわけではありません。これを手始めに、さらに業績や株価を分析して行きます。
決算&業績予想ツール
決算&業績予想ツールは、企業の業績に関するさまざまな情報が見られるツールです。企業が発表する業績予想や、プロのアナリストが分析する業績予想など、企業の業績に関する情報が網羅されていて、さまざまな角度から分析しています。
決算の発表の時は株価が動きます。気になる会社の決算はどのような状況なのか、過去にはどのように決算を迎えたのか?(下方修正が多かったり、上方修正が多かったりと、企業による傾向があります。)決算&業績予想ツールは、決算の発表時の対策を練るのに便利なツールです。
こちらを見ると、双日(2768)の業績予想に対する進捗率が100.4%になっています。そのため、業績は予想通りに順調に推移はしていますが、『それほどのサプライズはない』ことがわかります。
この分析ツールは『マネックス証券』で使えます。
スクリーニングツール
スクリーニングツールは、自分が買いたい株を見つけるためのツールです。スクリーニング(選別)するための項目がいろいろあり、その項目は証券会社により異なります。
例えば、『売上高が前期よりも10%以上増えている会社』とか、『株価の割安度を測るPERが10倍以下(10倍以下は割安)の会社』を見つけたい場合は、それぞれの条件を入力して、検索することが出来ます。
これをみると、2018年5月現在、売上高が前期よりも10%以上増えている会社は、872社あるようです。さらに、PERのところに『10』倍以下を入力すると、さらに絞り込めます。最終的に絞り込んだ会社を表示させて、会社の情報を細かく分析していくわけです。
このスクリーニングツールは『マネックス証券』で使えます。定期的にこのツールを使うことで、自分が買いたいと思う株を見つけるのに便利です。
トレードツール
トレードツールは、株の売買を簡単にするためのツールです。株価を分析したり株を注文したりと、便利な機能が揃っています。
このような、注文ツールの画面を見ながら、株の売買をします。この株価はリアルタイムで動いていて、画面をクリックしたり注文を入力したりして、注文を出します。
このような、株価チャートと呼ばれる、過去から現在までの株価の推移を表示させて分析をします。そうすることで、「今の株価は安いな」とか、「この株は上がり始めたところだな」と、株価が目に見えてわかりやすいわけです。
このトレードツールは『クリック証券』のツールで、『スーパーはっちゅう君』といいます。
スマホアプリツール
スマホアプリツールは、先ほど述べた株価チャートをスマホで表示させたり、株の注文がスマホで簡単に出来るツールです。
これを使うことにより、スマホでいつでもどこでも、株価の分析や注文が出来ます。
iClick株は、『クリック証券』のiPhone版のスマホアプリになります。
以上のように、さまざまな投資に役立つツールがあります。それぞれのツールは証券会社によって異なります。そのため、証券会社により使い分けが必要になるわけです。
例えば、私の場合は、マネックス証券ではスクリーニングツールを使っていますし、クリック証券では、会社の業績の分析ツールを使っています。私の場合は主に長期投資に役立つツールで使いやすいツールがあれば充分と言えます。
このように、あなたも自分の投資に役立つツールを見つけて、証券会社を使い分けると便利です。
3.短期売買と長期保有で口座を分ける
証券口座を複数持つ理由の3つ目は、株の短期売買と長期保有で口座を使い分けます。投資の資金を短期売買用と長期保有用で分けて管理するわけです。
株の短期売買と長期売保有、2つの口座の分け方について解説します。
株の短期売買の口座は手数料が安い証券会社を選ぶ
株の短期売買では、まず手数料が安くなければいけません。
なぜなら、株の短期売買は、株を何回も売買して利益をあげていきます。そのため、手数料を安く抑えなければ、コストが多くかかりその分利益が少なくなるからです。
例えば、50万円以下の株を1日2回売買すると、520円(往復)×2回=1,040円になります。
この状態が1ヶ月で10日間あると、1ヶ月の手数料は1万円以上かかります。(私が使っているクリック証券で計算)
それならば、1ヶ月に支払う手数料が10,800円だけで済む(50回まで)、月額定額手数料制の証券会社を利用した方がコストを削減できます。(岩井コスモ証券)コストが削減できるということは、その分利益が増えることになります。
私の場合は2003〜2007年ごろは、主に株の短期売買を中心にしていました。短期売買を何回も繰り返す場合は、定額制はかなりのコスト削減になります。
岩井コスモ証券(旧コスモ証券の)は月額10,800円で済む定額の手数料制があります。(当時は10,500円)
そのため、私は2003年から2007年までは、岩井コスモ証券を主に使っていました。
このように、短期売買を中心に行う場合は、あなたが株の売買をどのくらいするのかを考慮して、手数料を検討する必要があります。
しかし、株の売買をやったことがないと、月にどのくらい売買するのかは見当もつかないでしょう。そのため、まずは出来るだけ売買手数料の安い証券会社を選んでおけば良いかと思います。
手数料の安い証券会社を使ってみて、思いの外、取引回数が多くなり手数料がかかるようであれば、定額手数料制の証券口座の開設を検討する形が良いでしょう。
手数料の安い証券会社を選んだ後は、株式売買のランキング情報や、株式チャートが使いやすい証券会社を選ぶと良いです。なぜなら、株の短期売買にふさわしい銘柄を見つけるには、株式売買のランキング情報や、株式チャートを使って判断をするからです。
例えば、株式ランキングの『値上りランキング』や『出来高ランキング』から動きのある銘柄を選んで、株式チャートを使って分析して、売買する銘柄を選ぶわけです。
そのため、特に株式チャートが使いやすい証券会社を選ぶと良いでしょう。『値上がりランキング』や『出来高ランキング』は大抵の証券会社で見られます。ですから、株式チャートが使いやすい方が重要になります。
短期売買用の口座をまとめますと、まずは売買手数料が安い証券会社を選びつつその中から、株式チャートが使いやすい証券会社を選ぶと良いです。どちらにしても、株の売買をやってみないことにはわかりません。まずは、口座を開設し試して見ることが重要になります。
株の長期保有の口座はファンダメンタルズ重視の投資ツールがある証券会社を選ぶ
株の長期保有の場合は、長期保有に適した株を見つけるための投資ツールを重視して口座を選びます。
株の売買は半年〜何年かに一度するだけです。そのため、手数料も半年〜何年かに一度支払うだけになります。そのことから、それほど手数料は気にする必要はありません。
先述の通り、長期保有するための株を見つけるために便利なツールがある証券会社を選び、株を保有して、一度株を買ったら、株価を気にせず長期で保有することが大事です。
株の長期保有は一喜一憂してはならないからです。そのためにも、短期売買用の株とは切り離して、保有しておくわけです。
前述の通り、以前は岩井コスモ証券を使っていた私ですが、最近は主にクリック証券を使っています。クリック証券のファンダメンタルズ分析ツールは便利ですし、手数料は業界でも最低水準になっているため、十分な安さと言えます。
4.IPO(新規公開株)の抽選に申し込むための口座
証券口座を複数持つ理由の4つ目は、IPOのための口座になります。IPOとは新規公開株のことで、証券会社の抽選によりIPOを買うことの出来る権利が当たります。
なぜ、口座を複数開く必要があるのかといいますと、それぞれの証券会社で抽選する銘柄が異なるからです。そのため、IPOを扱っている証券口座を開けば開くほど、抽選に当たる確率は上がることになります。
IPOが抽選で当たると、その株が上場する前に買えるため(株は取引所に上場されないと一般の人は買えない)、上場する時よりも安く買えることが多いです。そのため、その株が上場した時はすぐに利益が出やすくなります。(必ずしも上場後は高くなるわけではありません。)
IPOは抽選で当たりさえすれば、リスクもほとんどなく、大きな利益を出しやすいわけです。そのため、IPOを専門に株の売買をしている人もいるほどです。
2018年4月の具体例をあげますと、IPOの結果は下記の通りでした。
銘柄(証券コード) | 主幹事 | 公開価格 | 初値 | 初値騰落率 |
---|---|---|---|---|
ブティックス(9272) | 野村證券 | 1,350円 | 3,210円 | 137.78% |
ビープラッツ(4381) | 野村證券 | 2,200円 | 10,000円 | 354.55% |
ヒューマン・アソシエイツ・ホールディングス(6575) | 大和証券 | 1,170円 | 3,600円 | 207.69% |
コンヴァノ(6574) | 野村證券 | 930円 | 2,189円 | 135.38% |
HEROZ(4382) | SMBC日興証券 | 4,500円 | 49,000円 | 988.89% |
アイペット損害保険(7323) | 大和証券 | 2850円 | 4,500円 | 57.89% |
ベストワンドットコム(6577) | SMBC日興証券 | 4,330円 | 14,830円 | 242.49% |
エヌリンクス(6578) | SBI証券 | 1,810円 | 3,780円 | 108.84% |
このように、それぞれの銘柄の主幹事(IPOを手がける証券会社)がIPO株をたくさん持っています。そのため、上記のIPO全ての抽選に申し込みたい場合は、主幹事の欄にある証券会社の、野村證券、大和証券、SMBC日興証券、SBI証券の口座を開く必要があるわけです。
先述のとおり、IPOを購入できる権利は抽選になります。抽選で当たると、上記にあるように公開価格で買えます。そして、上場後の初値(初めての株価)で売るだけで、利益がすぐに出ます。このように利益を出すためには、多くの証券口座のIPOの抽選に参加した方が有利になります。
そのため、IPOを取り扱っている証券会社の口座を何十も開く人がいるのです。
SBI証券は、『IPOチャレンジポイント』という、ポイント制度があります。その制度は、IPOの抽選に外れるとポイントが貯っていき、IPOが当たりやすくなる制度です。まずは、SBI証券に口座を開いてIPOにチャレンジして見るのも良いでしょう。
NISAの口座は1人につき1口座まで
普通の証券口座は、証券会社の分だけ開くことができます。しかし、NISAの口座は、1人につき1口座までしか開けません。
NISA口座とは、NISA口座で株を売買して出た利益に対する税金を払わなくて良い制度です。そのため、NISA口座を開設する人は多いです。
しかし、NISA口座では、株の保有金額の上限や保有する年数の上限が決まっています。それを超える分の取引は、普通の証券口座ですることになります。
つまり、NISAの口座が非課税になるからといって、いくつもNISA口座を開設すれば、どんどん株の取引が非課税になるわけではありません。NISA口座は1人につき1口座までと決まっていて、いくつも開設できないわけです。
例えばクリック証券で普通の証券口座を開いて、NISAの口座も開いたとします。
その場合は、他の証券会社の普通の口座は開けますが、NISAの口座は開けません。
そのため、NISAの口座を開く時は慎重に証券会社を選んだ方が良いでしょう。
NISA口座での株式売買は手数料が完全に無料の証券会社もあります。NISAの口座はそのような証券会社の口座を開く方がお得になります。
NISA口座について、詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
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まとめ
証券口座を複数持つ理由をお伝えしました。
株の売買手数料は安い方が良いですし、投資ツールはあなたにとって使いやすい方が良いでしょう。
しかし、株式投資を初めてする方は、投資ツールの使い勝手はわかるはずありません。
ですから、まずは、手数料が安目の証券会社の口座を開設して見てください。投資ツールも使ううちに慣れてくるはずです。
その後、株式投資を実際に初めて見て、その時のあなたの必要に応じた証券口座を開設すると良いでしょう。その時のあなたは、自然と証券口座を使い分けているはずです。