株式投資に興味を持った初心者の方で、「株式投資は怖い」「株式投資は危ない」などと、考えてしまう方もいると思います。
それは、株式投資にはいくつものリスクがあるからです。しかし、それぞれのリスクに対しての対処法もあります。
このページでは、株式投資に潜むリスクを解説すると共に、リスクに対する対処法をお伝えします。リスクに対する対処法を学んで不安を軽減して株式投資をしていきましょう。
株式投資4つのリスク
まず、株式投資にはどのようなリスクがあるのかを挙げてみます。
株の値下がりリスク
使いたいときにお金を使えないリスク
会社が倒産するリスク
株の上場廃止のリスク
以上の4つがリスクといえます。
それぞれのリスクと対処法について詳しく解説していきます。
株の値下がりリスク
株には値動きがあります。それはまさに波のようです。そして、株の底値(一番安い時の株価)がいくらになるのかは誰にもわかりません。そのため、株を買ったあとに株の値は下がることになります。
つまり株を買った後も、株の値がどこまで下がるのかはわからないわけです。このどこまで株が下がるのかわからない部分がリスクになります。
例えば、2つのケースを挙げて説明します。どちらも、2000円の株を100株買ったとします。購入金額は「2000円×100株=200000円」で、20万円です。ケースAの場合、この2000円の株が1800円まで下がってから、その後上がり始めて2200円になりました。図で表すと下の図の通りになります。
そしてケースBの場合、同じく2000円で買った株が1000円まで下がってから、その後1500円までしか上がりませんでした。図で表すと下の図の通りです。
この2つのケースの場合、ケースAは10%の含み損の後に10%の含み益が出ていることになります。そのため、リスクは結果的に10%になりました。
ケースBの場合は、50%の含み損になった後に25%の含み損が出ている状態です。このように利益が出ていない含み損の状態がいつまでも続く可能性もあるわけです。ケースBのリスクは結果的には50〜25%になりました。
以上のケースのように、株がどこまで下がるのかは誰にもわかりません。
そのため、このような株の値下がりリスクに対する対処法は、損切り(損している時に株を売ること)するポイントを考えて置くことです。
誰にもわからないことは自分でコントロールできません。それよりも、損切りするポイントを自分で決めて置くわけです。それにより、損失は自分でコントロールができることになります。
どこに損切りするポイントを置くのかは、投資スタイルによりことなります。株の短期、中期売買と株の長期保有では損切りするポイントの考え方が違うからです。
投資スタイル別の損切りするポイントの考え方はこのページの後の方で詳しく解説します。とりあえず今は、値下がりリスクに対する対処法は損切りする値段を予め決めておくこと。そして、その決めておいた値段になったら損切りを確実に実行することになります。
使いたいときにお金を使えないリスク
普段の生活で、急にお金が必要な時はあるでしょう。そのような時に、お金をほとんど株式投資に回してしまっていては、使うお金がなくて困ってしまいます。
例えば、病気や怪我になってしまい入院にかかる費用がかかったり、生活をするのに必需品である生活家電が壊れて新しく買う必要があったりする場合などがあるはずです。
このような時に、そもそもは株式投資の資金は余裕資金で行うべきであり、投資の資金とは別にお金は蓄えておくべきです。
しかし、「自分は独身だし、普段は特に使う予定もないから」などと考えてしまうこともあるはずです。そのため、つい株式投資の方へお金を回しすぎてしまうこともあるかと思います。
そのような急な出費がある時に便利な証券会社の商品があります。それは、野村證券にある野村WEBプラスローンです。これは、保有している株を担保にお金を貸してもらえる制度です。
例えば、時価100万円分の株式を長期保有しているとします。この持ち株に対して、50%分までのお金を借りることができます。つまり持ち株の時価が100万円の場合は、50万円まで借りられることになります。
しかも、金利は2017年1月4日現在で年利2.975%です。変動金利のため、今後上がる可能性もあります。しかし、消費者金融や銀行のカードローンを使用しても、現在は金利14%前後はかかります。このことから、10%以上もお得な金利で借りられるわけです。
そのため、株を持っていて急な出費がある場合には便利な商品といえます。株式投資は余裕資金で行うものです。しかし、どうしてもお金が必要な時は下手に金利の高い消費者金融などで借りることはせず、このような、商品を活用する方が良いのではないでしょうか。
会社が倒産するリスク
会社が倒産する件数は年に約1万社前後に及びます。中小企業の廃業・解散も含めると、2万5000件になります。そして全国の企業数は総務省の統計データによると、27年度のもので175万社です。(大企業・中小企業・小規模事業者合わせると382万社(中小企業庁データによる))
このことから、会社が倒産するリスクは1%にも満たないことがわかります。
さらに、上場企業はある程度精査されている企業です。そのため、そこまで倒産するリスクは高くありません。
上場企業で倒産するリスクは上場会社が約3500社で、民事再生手続や超過債務におちいる会社が年に数社です。このことから、仮に年に4社が倒産するにしても「4/3500社」で、約0.1%前後になります。倒産のリスクはほぼないと言えるのではないでしょうか?
それでも、倒産する確率はゼロではありません。そこで、倒産しそうな銘柄の売買はしないことが対処法になります。
具体的には、倒産するような企業は債務超過といって、お金を借りすぎていたり業績が赤字続きだったりします。そのためまずは、自己資本比率を調べておくといいでしょう。自己資本比率が50%以上であれば、まずいきなり倒産することはないでしょう。
自己資本とは簡単にいうと、返さなくて良いお金です。資本金や会社の利益で蓄えたお金のことである「利益余剰金」も含まれます。そして、他人資本は借入金などの返す必要があるお金のことです。
自己資本比率はこの自己資本と他人資本の割合のことです。つまり自己資本比率が50%もあれば、返す必要のあるお金は自分たちのお金でまかなえることを意味しています。そのため、今すぐに倒産するようなことはないと言えるわけです。
上場企業の場合は、連結決算が2年連続で債務超過になると上場廃止になります。そのため、1度債務超過になると、その後に改善されますし、チェックしていればいきなり倒産することはありえません。
しっかりと業績や財務などのファンダメンタルズをチェックしていれば兆候が現れます。そのため、定期的に持ち株の自己資本比率や、業績をチェックすることで持ち株の倒産リスクはまずないと言えるのです。
株の上場廃止のリスク
上場廃止とは、上場会社の株式が証券取引所で売買出来る資格がなくなることです。そのため、持ち株が上場廃止になり株式市場での売買が出来なくなるリスクがあります。
株式の上場には各株式市場ごとに基準があります。株主数や売上高や時価総額や流通している普通株式数などです。それらがある一定の基準に到達していないと上場廃止になる可能性があるわけです。
これらの上場廃止の場合、まず上場の継続が不適切だと疑いを持たれて、実際に上場廃止になるまでに一定期間の猶予があります。上場の継続が不適切な疑いを投資家のみなさんにお知らせして、審査する必要があるためです。
その上場廃止が決まるまでの審査期間は監理銘柄と呼ばれます。監理銘柄のときも株の売買はできます。そして、監理銘柄のうちに上場廃止基準に該当するおそれがなくなることにより、元のとおりに普通の銘柄として売買されるようになります。
しかし、上場廃止が決まると今度は整理銘柄になります。整理銘柄になると、原則的に1ヶ月間整理銘柄として売買された後に、上場廃止になり株式市場では売買ができなくなるわけです。その猶予期間内にも株の売買はされます。そのため、株を売ることが出来ます。
このように、投資家の皆さんにお知らせしてから、上場廃止になるまでには一定の期間があります。そして、その間にも株の売買はできます。そのため、特にリスクはないといえます。
その他に、上場廃止で多いのは合併や完全子会社化になります。この場合は上場廃止のことが発表された後に、監理銘柄指定や整理銘柄指定にはなりません。一定期間が過ぎた後にそのまま上場廃止になります。
この場合は、合併や完全子会社化の条件により株価が多少上がったり下がったりする程度です。ですから、この場合の上場廃止も特にリスクはないといえます。
その他は、債務超過や民事再生法の場合もあります。しかしこれは、先述のとおりの対処法があります。
そこで、1番問題でリスクになる上場廃止の例があります。それはまれですが、粉飾決算などの不祥事の場合の上場廃止になります。
粉飾決算などの不祥事の理由による上場廃止の場合は、会社の不祥事が明るみになった時点で、株価は相当下がる可能性があります。
上場廃止が決まる前の監理銘柄に指定されるさらに前の段階で、株価が大きく下がるわけです。そのため、このリスクへの対処は難しいと言えます。会社の不祥事を見抜くことは困難だからです。
そのため、不祥事がらみの上場廃止のリスクを軽減するためには、持ち株の分散投資しかないでしょう。
例えば、資金100万円のうち、一つの銘柄は資金の20%までとする。など、自分でルールを設定します。そうすることにより、一つの銘柄が会社の不祥事による上場廃止で暴落しても、全体資金の20%弱の損失でおさまることになります。
この場合は株の価値がすぐさまゼロになるわけではありません。そのため、売れるうちに売っておきましょう。
このような不祥事を起こす銘柄は、短期売買をするために値動きを見て売買するのは悪くはないです。その後の会社の対応によっては、上場廃止を免れる可能性もありますし、そうなると、株価も回復する可能性が高いからです。
しかし、不祥事を起こすような会社を長期保有することはやめた方が良いです。やはり長期保有する銘柄は信頼をおける会社であることが重要だからです。私たち投資家は、株式会社の出している情報を信じて株の売買をしているわけです。
その情報が嘘だとしたら、株を売買したり長期保有する前提が崩れてしまいます。ですから、株の特に長期保有に関しては信用できる会社の株に限るといえます。
さて、ここまで株式投資のリスクと対処法について解説しました。この後は、先述のとおり株式投資には主に短期、中期的な売買と長期的な保有の方法があります。
そして、短期、中期的な売買と長期的な保有では、株の値下がりリスクに対する対処法がことなります。そこで、株の短期、中期的な売買と長期保有の視点から、株式投資のリスクについて考えてみましょう。
株の短期、中期売買のリスクに倒する対処法
株の短期、中期的な売買では株の値動きに重点を置きます。株を持っている期間が短いため、倒産リスクは低いです。そのため、銘柄のファンダメンタルズ(業績や財務状況)の分析よりも株の値動きの分析が重要になります。
株の値動きにはある程度この辺が底値ではないか? という場所があります。その辺を探りながら株の売買をしていくことになります。
そのため、何回も株価が止まる位置があれば、その位置が株の底値かもしれないと考えます。そして、そう考えた人が増えれば増えるほど、株価は下げ止まります。そして株は上がって行くわけです。
したがって、株の短期、中期的な売買の値下がりのリスクに対する対処法は、出来るだけ、何回も株価が止まる位置で株を買う。そして、何回も株価が止まった位置を下回ってしまったら、損切りをする。これが、値下がりするリスクの対処法となります。
この対処法により、出来るだけ少ない損失で済ませることが出来ます。
例えば、以下の図のようなときに買うわけです。
そして、図の2回下値を確かめた辺りを下回ったら損切りします。この値を下回ったところでは損切りをしないといけません。
なぜなら、何回も株の値が止まったところを下回ると、株価は次の下値はどこなのか探しにいきます。そのため、我先にと考えた人たちが株を売ります。その動きをみた人たちがこれは売らないともっと下がると考えます。そして、株はさらに下がるわけです。
株で損している状態のことを「含み損」といいます。株を売らないでいると、その含み損がどんどん増えていきます。そして、売るに売れなくなる状態になってしまいます。この状態を「塩漬け株」と呼びます。
塩漬け株にしてしまう心理には「株は売らなければ、損失確定にはならない」という思いがあります。そして、「持っていればまた株価は元に戻るから大丈夫」だと考える心理状態があります。しかし、この考え方は非常に危険です。
なぜなら、株価は元に戻らないこともありますし、戻ったとしても、4,5年も先になることもあります。4,5年も持ち続けていると短期、中期的な売買ではなくなってしまいますし、短期、中期的な売買をしている意味がなくなります。
そのため、短期、中期的な売買では、損切りは絶対にするべきなのです。
含み損の状態は「損失は確定しない」と、考えてはいけません。含み損は、今、損失が出ている状態です。それを売ろうが売りまいが関係はありません。損切りは確実に行えるようになりましょう。
株の長期保有のリスクに対する対処法
株の長期保有では、株を長い間保有することに重点を置きます。株を長い間保有することで、その間に株主配当を受け取ったり2〜10倍以上もの値上がり益(キャピタルゲイン)が期待できたりします。
株を長い間持ち続けるため、短期、中期的な売買よりもさらにどこまで値が下がるのかわからないリスクがあります。長い間には外部要因による株価下落リスクが何度も起こる可能性があるからです。
例えば、金融危機や為替の変動リスク、テロ行為などの地政学的リスクがあります。
このような株の長期保有に対する値下がりリスクには、定期的な銘柄のファンダメンタルズ分析をすることで対処します。
基本的には株価が割安で長期的に業績が右肩上がりの会社を選ぶことが重要です。このような銘柄を選ぶことで、株価が50%以上下がったとしても、長期的に株価は回復します。そのため、株価が暴落した時は買い増しのチャンスになります。
例えば、リーマンショック(アメリカの住宅バブル崩壊から発生した2008年の世界的な金融危機)などの外部要因で業績が一時的に下がっても、その後に業績が持ち直すことはよくあります。そのため、リーマンショックなどの暴落の時は買い増しのチャンスになります。
ですから、過去にあった株価暴落の時の会社の業績を調べると良いでしょう。そしてその後、その会社がどうなったかを調べることが重要になります。一時的に業績が下がっていても長期的に右肩上がりの業績であれば長期保有に適している銘柄になります。
つまり、会社の過去の業績の分析と定期的なファンダメンタルズ分析が重要になります。
例えば、金融危機が過ぎ去って1,2年様子を見たけれど、業績が一向に回復していない。しかし、他の銘柄や他の会社の業績は回復している。となれば、持ち株が長期的に右肩上がりの業績という前提条件が崩れます。
長期保有の株はこのような場合が損切りを検討しなければならない状況といえます。
自分が株式投資で何をしているのかがわからないリスク
株式投資の1番のリスクは、自分が何をしているのかを理解できていないことです。
例えば、株をなんとなく良さそうだから買ったとか、なんとなく今買いたかったから買ったなどになります。
2016年の世界長者番付第3位(それまでも世界1〜4位)の大富豪にウォーレン・バフェット氏がいます。バフェット氏は円換算で6〜7兆円ものお金を投資で作りました。コカコーラやウェルズ・ファーゴ(銀行)やアメリカンエクスプレスなどを長期保有しています。
バフェット氏は、「リスクとは自分が何をやっているかよくわからない時に起こるものです。」と言っています。この言葉のとおりに、彼はIT企業が増えてきた時に自分のわからないものには投資をしないことを貫きました。IT関連企業には投資をしなかったのです。
その時にITバブルが起こると、IT関連銘柄はこぞって上がっていきました。この時はIT銘柄に投資しないなんて、「ウォーレン・バフェットも大したことない」と言われたものです。
しかし、その後にITバブルが崩壊したことにより、IT関連銘柄は暴落しました。その最中にも後にも、コンスタントに投資で増やしているバフェット氏は、やはりすごい人だと痛感した人は多いはずです。
2017年現在ではアップルやIBMにも投資をしており、自分が理解出来てきた銘柄にはしっかりと投資する柔軟なスタイルで投資しています。
このように、株式投資で最も重要なことと言えるのは、自分がしっかりと理解しているものに投資することです。短期売買にしても、自分がしっかりとした基準を持って理解して売買することが大事です。(バフェット氏は短期的な売買はしませんが。)
自分が株式投資で何をしているのかわからないリスクに対処するためには、根拠のない株の売買はしないようにすることです。
短期売買でも、長期保有でもしっかりとした根拠を持って投資をする心がけをしましょう。わからなければ、株の売買をしなければ良いのです。株の売買をしなければ損をすることにはなりません。
個人投資家の強みはいつでもお休みできることになります。わからないときはしっかりと休むことが重要です。
まとめ
株式投資のリスクについて解説しました。株式投資に怖いイメージはありますが、どのようなリスクにも対処法はあります。ですから、怖がらずにしっかりと勉強と実践を続けて行くことが大事です。
自分が株式投資の短期売買や長期保有でやっていることを、他の人に説明出来るようになりましょう。自分の株の売買を他の人に自信を持って説明出来るのであれば、しっかりとした根拠がある株の売買をしていることになります。そうなれば、自然と利益が出るようになっているはずです。