株の配当金は、株主にとって1つの収入源であることからとても重要です。ただ、もらえる金額が大きいからという理由で、銘柄(株式市場で取引されている会社の名称)を選ぶのは間違いです。
なぜなら、配当金をたくさんもらっても、その金額以上に株価が下がり損をしてしまっては意味がないからです。
このページでは、株の配当金についてわかりやすく解説します。配当金に目を向けた銘柄選びの参考にしてください。
配当金から銘柄を探す
株式会社の目的の1つに、株主(会社の株を持っている人)に会社の利益を分配することがあります。これが配当金のことで、株主にとって大事な権利となります。
例えば、今年は会社の利益が1億円出たことから、1億円のうち5000万円を株主に配当金として分配するという具合です。このようなことが株主総会(株主が会社の方針などを決める会)の決議で決まるわけです。
株式発行数500万株の会社が5000万円を分配する場合、1株あたりの配当金額は「5000万円÷500万株=10円」で、10円となります。図で表すと下記のとおりです。
配当金は年に1回だけとは限りません。会社によって違います。一般的には年に1〜2回で、まれに4回配る会社もあります。
また、会社にとって特別な利益が出たときに分配する「特別配当」や、会社の◯周年記念のときに分配する「記念配当」があります。これらの配当はボーナスみたいなもので、出るとうれしいものです。
配当金の額から銘柄を探すのも株式投資の1つの楽しみ方です。
配当金額よりも配当利回りが重要
株式市場で取引されている株式の配当利回りの平均は1〜2%で推移しています。中には7%と高配当の会社や無配当の会社もあります。配当金から銘柄を探す上で、配当金額で探すよりも、配当利回りで探すことが重要です。
例えば、以下のような2つの会社があります。
会社A:株価 100万円 配当金5000円
会社B:株価 1000円 配当金 10円
図にすると下記のようになります。
A氏とB氏の二人の投資金額を同じ100万円にして、配当利回りを計算してみます。
A氏は会社Aの株を1株保有しているとします。一方、B氏は会社Bの株を1000株保有しているとします。A氏「100万円×1株=100万円」B氏「1000円×1000株=100万円」となります。どちらも投資金額は100万円です。
もらえる配当金はA氏「5000円×1株=5000円」で、5000円。B氏「1000円×10円=10000円」で、10000円となります。配当利回りで計算すると、A氏「5000円÷100万円×100%=0.5%」で、0.5%。B氏「10000円÷100万円×100%=1%」で、1%となります。
会社の配当金額だけ見ると、会社Aの方が5000円で、会社Bの10円よりも多く感じます。しかし、配当利回りから見るとB氏の1%の方がA氏の0.5%よりも、2倍あるのです。
このように、配当金から銘柄を探す場合は、配当額よりも配当利回りでみることが重要です。
株価が下がると配当利回りは高くなる
先述のとおり、配当金の額は利回りで計算することがあります。なぜ、利回りで計算するのかというと、株式投資での成果を考えたときに、債券投資や預貯金などと比べることができるからです。
株を買い、債券や預貯金などと比べて配当利回りが低いのであれば、債券や預貯金などのリスクが低い方に投資をした方が良いというわけです。
配当利回りの計算の例をあげます。株価200円の会社Aがあります。会社Aは年に1回1株につき4円の配当金を出すことを決めました。会社Aの配当利回りは「4円÷200円×100(%)=2%」で、2%となります。
しかし、配当利回りの計算で注意したいことがあります。それは、株価は動いているので、配当利回りも変わってくるのです。
例えば、先ほどの会社Aの株を今度は300円のときに5000株買って保有していたとします。その場合、出したお金は「300円×5000株=150万円」で150万円となります。そしてもらえる配当金は「4円×5000株=20000円」で、20000円となります。
実質的な配当利回りは「2万円÷150万×100(%)円=1.33」で、1.33%となるのです。図で表すと下記のとおりです。
先ほどの株価が200円のときの配当利回りは2%でした。そして、300円で株を買ったときの配当利回りは1.33%でした。
つまり、株価が安いときに株を買うと配当利回りは高くなるのです。配当利回りの面からみると、株価が安いときに株を買うことが重要となります。
配当の権利確定について
株式は株式市場でいつでも売買されています。つまり株主は入れ替わっているわけです。そこで、疑問として浮かぶのが「配当金を受取る権利はどの株主にあるのだろう?」ということがあると思います。
配当金を受取る権利は、「権利確定日」という日が決まっています。この日に株主の名義が書き換わることにより、配当を受取る権利を得られるのです。
株主の権利は配当を受取るだけではなく、株主優待を受取る権利や株主総会で投票する権利も含まれます。権利確定日の3営業日(土日、祝日を省いた日)前までに株式を保有するだけで、その会社の1年間の株主としての権利が確定します。
権利確定日の3営業日前なのは、株主の名義が書き換わるのに、3営業日を必要とするためです。この権利確定日の3営業日前の日のことを「権利付最終日」といいます。
権利確定日は企業により異なりますが、月末であることが多いです。また、より多くの企業の決算日が集中している3月や9月の末日に権利確定日としている企業がいくつもあります。ここでは、3月末日が権利確定日として具体的に説明します。
3月のカレンダーが以下の図のようになっているとします。
3月31日(月)が権利確定日です。株主の権利を得るためには、先述のとおり、権利確定日の3営業日前の日までに株を買わなければなりません。
上記の場合は3月26日(水)が権利付最終日となっており、この日までに株を買い、この日だけ株を持ち越すことにより、株主の権利が確定します。
株主の権利を得た権利付最終日の翌日のことを、「権利落ち日」といいます。配当金をしっかりと受け取るためには、株主の権利を必ず確定する必要があります。株を保有したい銘柄の権利付最終日をチェックするようにしてください。
配当金はいつもらえるのか
配当金の権利が確定する日がわかりました。次に配当金は実際にいつもらえるのかについてです。企業により多少の誤差はありますが、およそ2〜3ヶ月後となります。
受け取る方法はさまざまです。郵送でおくられてくる「配当金領収書」を郵便局に持って行き、現金を受け取る方法。他には、指定の銀行口座に振り込んでもらったり、証券口座に直接入金してもらったりするなどの方法があります。
私は指定の銀行口座に振り込んでもらうか、配当領収書を郵送で受け取るようにしています。
しかし、せっかく配当領収書を郵送で送ってもらっても、あまりに金額が低いと受け取りづらかったり、面倒くさかったりします。そのため、現金に交換しないでいくつか手元に残っています。
受取の期日も決まっていることから、配当金の受取を確実にするためには、指定の銀行口座に振り込んでもらうのが良いでしょう。
下の写真は、まだ現金を受け取っていないインプレスホールディングスからの配当金領収書です。インプレスは3月決算で、受け渡し期間が6月24日からになっていることから、受け取るまでに約3ヶ月かかることがわかります。
無配当株について
上場(誰でも会社の株を売買できるようにする)している会社、約3900社のうち3300社強の会社が配当金を分配しています。しかし、600弱の会社は配当をだしていません。この配当を出していない株を「無配当株」といいます。
「無配当株のような株は買わない方が良い!」と考える方もいるかもしれません。
しかし、一概にそれが正しいとはいえません。なぜならば、無配当株の中には、業績が悪く利益がないため配当金を出せない会社と、業績が良く利益もたくさん出ているが、あえて配当金を出していない会社があるからです。
後者の場合は、たくさん出ている利益を使ってさらに業績を上げようとしているケースがあります。このような会社はまだまだ、発展途上で、急成長中の会社に多いです。
例えば、2003〜2005年のころのライブドアが有名です。ホリエモンこと堀江貴文氏は、当時20万人以上の株主がいたライブドアの株に配当金を出しませんでした。配当金を出せるほど利益が出ていたにもかかわらずです。
このように、無配当の株の会社の中には急成長中の会社も含まれています。無配当だからといって、買わない方が良いとはならないことになります。
高配当株について
株式の配当利回りは平均1〜2%の銘柄が多い中、5%以上の高配当の銘柄もそれなりにあります。
無配当株とは逆に、会社が急成長期を脱したことで安定期に入った会社があります。安定期に入った会社は、株主には株を長く保有して安定してほしいことから、配当金を上げていく場合があります。
他には、会社の業績の見通しが悪くて期待できない株のため、株が売られて株価が下がった会社もあります。こちらの会社の場合は、先述のとおり株価が安くなったことにより配当利回りが高くなっため高配当株になってしまったケースです。
このような高配当株の場合は業績の低迷が続いて、配当が出なくなることもあるので注意が必要です。
高配当株を狙うなら、やはり業績の見通しが明るい銘柄である方がいいです。一方、株価が下がって高配当になっている場合でも、日本株式全体が暴落したときがあります。
その場合は、個別にその会社の業績が悪くなるわけではありません。外部要因で株価が下がっただけである可能性が高いことから、のちに株価が上がる(元に戻る)ことによる利益も狙えます。さらに、高配当の配当金も狙えることから、一石二鳥といえます。
高配当株の会社の中には、急成長中の会社はほとんどありません。そのため、株価が10倍以上になるような会社はまずないでしょう。それよりも、長い間安定して高配当をもらうのに適しています。
まとめ
ここまで配当金の基本について詳しく解説しました。配当金が出ない企業や、高配当の企業があることがお分かりいただけたのではないでしょうか。そして、配当が出ないと悪い企業なわけでも、高配当だから良い企業だというわけでもないことがご理解いただけたと思います。
短期的な売買に配当金はあまり関係ありません。しかし長期保有が目的の場合、配当金はとても重要な項目となります。ですから、長期保有で株式投資をする場合は、配当金の額と配当利回りは会社の業績とともに必ずチェックするようにしてください。